第3話 永久の恋
「モモっ試練だよ」
ステラが寝ていたモモに話しかけている。
「ふふっ。やっとおきた。授業中に寝ていたらダメなんだからねっ」
ふわわ~っと起きたモモ。
キョロキョロと回りをみまわして、また顔を腕の中にうずくめてしまうのだった。
「寝ちゃったな。どうするステラ?」
「すこし寝かせてあげましょう。起きたらスグに出発」
キラキラと輝く星空の中、モモとステラ、モモのお姉さまであるミラは杖に乗り空中を移動している。
「ふふふ、モモったら寝すぎ」
ステラはモモをみて微笑む。
本当は、日が沈む前に起こすつもりだった。しかし、モモのお姉さまが寝かせてあげましょうといったのだ。
えへへっ といった様子のモモがふっと夜空をみあげた。
「わぁ~、星空がキレイだね」
「モモ、星座わかる? あそこにハクの乙女座があるよ」
「えっどこどこ?」
う~っ とうなりながら探しているモモに俺は教えてやることにした。
「ココから正面にみて一番光っている星があるだろ。そこがハクの乙女座の中心さ」
「あぁわ~ わかったよホタルちゃん。きれい……」
ふっと 横からお姉さまが話し始める。
「モモ、ハクの乙女座について知っているかしら?」
横に首をふるモモ。
「もともとハクの木は神々が宿るところということは知っているわよね? ハクの乙女座はその木の下で待ち合わせをしていた女性が、ハクの木に宿っていた神聖クレティオスと恋におちるところから始まるの」
モモは目をつむりながら、お姉さまの話にみみをかたむけている。
「わぁ~すてき、神様の宿る木で神様と恋をするなんて」
お姉さまは続けて話す。
「でもね、それは実らない恋。女性は恋の苦しみから命を絶ってしまった……」
モモの顔がすこし悲しい表情に変わる。
「女性をかわいそうに思った慈愛の神、シサラテアが彼女を星にすることで神々に近い存在としたの。その星がハクの乙女座なのよ」
「その後、彼女は神聖クレティオスと結ばれたという人もいるんだ」
ステラはつけたすようにいった。
「きっとその女性は幸せだったとおもうな。だからあんなに輝いてるんだね」
モモはいつもの笑顔に戻る。
わくわくしているせいか。足をぶらぶらとふっている。
う~ん、バランスがとりずらいな。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
街に着いたときにはもう朝であった。
「うぉっ!!!」
思わずオレは声をあげてしまう。
モモが目をキラキラと輝かせている。
「うわぁ~こんなに朝はやいのに人がいっぱいいるよ。ステラちゃん」
「ほんとだ。きっと朝市かな」
その朝市の規模はとてつもなく大きかった。横ではフルーツの試食を持ったお姉さんがきゃぴきゃぴと呼び込みをしている。その横では、じゅわ~と音をたてながら鉄板料理を作っている。反対側では、あおあおとした野菜がうられ、その横では氷を砕いてシャーベットにしたデザートがあった。
「お姉さま。なにか食べませんか?」
モモがうれしそうにといかける。
「えぇ。そうしましょう。モモは何がたべたいのかしら?」
「え~っと。フルーティキャンディがたべたいな」
「あの白桃に水あめがまかれたキャンディーのことね? わかったわ。すこしまってて。かってきてあげるわね」
「少し混んでない。モモ?」
「たしかに。あの屋台、すこし混んでいるな。モモのお姉さま、律儀に後ろでまってるぞ」
あの人の中に割って、おじさんに声をかけるのは至難のわざだ。一般庶民とは生活のかけ離れたお嬢様であるモモのお姉さまにはムリというもの。
「モモ。お姉さまのところにいってあげて」
「うん。いってくるね。」
オレ(杖)をステラにわたし、かけて行くモモ。お姉さまに説明している。
あらそうなの? っといった感じのお姉さま。モモがみていてくださいね、とばかりに人の中に割って入っていく。
「おじさーん、キャンディー3つください」
「はいよーっ」
どうやら屋台のおじさんに聞こえたようだ。
「おじょーちゃん。じゃんけんに勝ったら、もう一本あげるからねぇ」
「じゃーんけーん」
「ポン」
うれしそうにモモのお姉さまと歩いて戻ってきたモモ。
「ハイ、ステラちゃん。ホタルちゃんにもあるんだよ」
「えぇっ。オレにも。ありがとうモモ」
どうやらじゃんけんに勝って、もう一本もらったらしい。
「そういえば、モモに試練のこといってあったかな?」
ステラが苺のはいった水あめをなめながらいう
「あぁーそういえば、きいてないかったね」
モモは えへへっと照れ笑いし、お姉さまの方をみる。
「1ヶ月前、この地に悪魔の反応があらわれたわ。すぐに2年生が1人でむかったのだけれど事情により悪魔を封印することはできなかったの。それで今回は1年生2人に課題としてこの悪魔退治がまかされたのよ」
「一ヶ月も前! 早くみつけて退治しなくちゃね…… きゃっ!!」
「モモっ!!」
余所見をしながら歩いていたモモもに正面から女性とぶつかってしまう。
お互いにしりもちをついてしまった。モモの頭の上に女性がかぶっていたとおもわれる麦わら帽子がかぶさる。
「あてててっ。ごめんなさい。大丈夫ですか?」
モモはあわてて女性に声をかける
「こちらこそスミマセン。いそいでいたもので」
そういい残すと女性は、神社のほうへいってしまった。
「モモ。麦わら帽子かえさないと」
俺達は、麦わら帽子を返そうと神社に向かった。
「はぁはぁ……。モモ大丈夫?」
「大丈夫だよステラちゃん」
「ここの階段はすこしキツかったわね」
階段を上ると、さっきの白く長い髪の女性が男性につきとばされていた。
「なにしてるんですか」
男性の前に立ちはだかったステラは大きく手を広げて阻止しようとしている
「もう、おわったんだよっ! ケッ」
男性は階段をおりていってしまった
白く長い髪の女性をみたお姉さまが呪文をとなえる
「エル・ミラル・ミールス」
すると女性に悪魔がとりついているのがみえた。
「悪魔だよモモ!」
オレはモモに伝える。うん。とうなずくモモ。
にしても気づかなかったな。モモ達の課題なのにお姉さまは甘いんじゃないのかとおもう。
「とりあえず、どこかで休みましょう」
ステラは神社のかたすみに女性をつれていき座らせることにした。
「さっきの男性は?」
ステラが女性に質問する。
「おはずかしいところをみられてしまいました。あの男性は私の婚約者です」
「なにか事情があるようですね」
「えぇ・・・・」
女性はさっきのお礼に、家にご招待したいという。
モモたちは女性の申しでにあまえることにした。
「モモ。さっきの女性はなんだか疲れているようにみえるのだけれど」
お姉さまが問いかけるようにモモにいう
「そ、そういえば、なんだか目の下にスゴイクマができてます」
「婚約者との関係で眠れないのかしら」
「さあ料理ができましたよ。めしあがれ」
わぁおいしそうと盛り上がるモモたち。結局、楽しい雰囲気の中で悪魔の話をきりだすことができずに夜になってしまった。
「ホタルちゃんどうしたの?」
「なんか下から変な音が聞こえないかモモ?」
オレとモモは真夜中の真っ暗な階段をおりる。
「な、なにしてるんですかっ!!!」
女性に駆け寄ったモモは女性が手に持っていたナイフを杖で叩き落す
腕にはリストカットのあとがたくさん残っている。
「ねむれないんです・・・・」
女性はうつむきながらぼそっと話し始める。
「スゴク眠くて寝たいのに。眠れないんです。辛いんです。死ぬ(眠る)ことさえできない……。私は一生眠れないの」
疲れて眠いときを思いだせば、彼女の苦しみがわかる。杖のオレだって眠るのをガマンするのは苦痛だ。それが寝ようとしても眠れないのだからなおつらい。
リストカットしてしまう精神状態においこまれてもしかたがない。
モモはオレをぎゅっと握り締めて彼女にいう。
「大丈夫です。悪魔との契約ですよね。今、悪魔を封印します」
「モモ待ちなさい」
音もたてずに階段をおりてきたお姉さま。
「すでに彼女の体はボロボロ。死(眠れ)ない悪魔の効果が彼女の命をもたせているだけにすぎないわ」
それはつまり、悪魔を封印すれば、とたんに死(眠り)につくということだった……。
「私は、あの人のそばにずっといたかったの。私は彼のそばから離れたくなかった。だから悪魔と契約をむすんだのに……。心は離れてしまった」
本当なら彼は家の事情でこの町から出て行くはずであった。しかし、悪魔の力により彼女から遠くにいけないようにしたのだ。彼女の睡眠という対価を支払って。
しかし、彼はもう彼女に興味はない。これほど辛いことはないだろう。心が離れてしまっているのに、彼女と男性の距離は離れられない。婚約まで決まっているというのに。
「悪魔を封印しなければ、彼女は永遠に生き地獄よ……」
お姉さまはいう。
「おねがい、もうわたしを眠らせて」
彼女はモモに懇願するようにたのみこむ。
「モモ……。悪魔を封印だ……」
モモは足がすくんでペタっと床に座り込んでしまう。
お姉さまがゆるやかに前にでる。
「安らかに眠りなさい……」
「ありがとう……」
そっと目をつむるお姉さまは詠唱する。
光と同時にモモは気をうしなってしまうのだった
・・・・・・・
・・・・・
・・・
杖に座りふわふわと浮かびながら学園に戻る。
モモは夜空をみあげていった。
「ハクの乙女座はきっと幸せだよね……」
3話完
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