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第1話 可憐で清楚にお姉さま登場

「モモー、ちゃんと杖もったのー?」
2階の窓から心配そうにみおろすお母さん。今日から魔法使いになるために、魔法学園に入寮することになってるの。

「いってきまーす。お母さん。杖はちゃんと持ってるよー」
絶対、りっぱな魔法使いになってもどってくるね。

お母さんが見えなくなるまで笑顔で手を振り続ける。 心配させちゃいけないよね。

「おいおい。早く行かないと待ち合わせ場所に遅刻だぞ!」

私の杖、ホタルちゃんが語りかけてくる。

「モモ、テレポートだっ!」

「テ、テレポートなんてハイクラスな魔法使えないよーぅ。ホタルちゃんどうしよう。遅刻しちゃう」

「とりあえず、詠唱するんだっ! ソコノ、オニイチャン ワタシヲツレテッテ ウッフーンだっ! せーのっ!」

「オニイチャン、ツレテッテー(ハート)」

ザザーっー、 何頭も通りすがりに止まる白馬に乗った通行人(おにいちゃん)達。

「あう、あの…。モモをステラちゃんの待つ、ハクの木までつれてってほしいの…」

「わかったよ。お譲ちゃん。さぁボクの後ろに乗りたまえ」
キザっぽい人(おにいちゃん)が手を差し伸べる。

「モモ! やったな。詠唱成功だ。これなら待ち合わせ場所にスグに着くよ」

「うん。いい人がいてくれて助かっちゃった」

「おっ、ハクの木がみえてきたぞ」

ハクの木の下には、鞄を行儀よく手に持ちこちらを見ている女性がみえる。長い髪が風にそよがれている姿が美しい。ステラちゃんだ。

「モモ? その人だれ?」

「この人は、親切に私をステラちゃんのところまでつれてってくれたの」
手を向けてステラちゃんに紹介する。

「ぐへへっ、さぁ、お礼をしてもらおうか」
キザっぽい人(おにいちゃん)が手をそわそわしながら迫ってくる。

「キャーッ!」

「エル・ミラル・ミールス」
どこからともなく聞こえてきた詠唱呪文。

風が吹き荒れた瞬間、キザっぽい人(おにいちゃん)の足もとが光だし、地面が爆発した。

キザっぽい人(おにいちゃん)は、地面とともにふっとんでしまった…。キラリーン。

「大丈夫?」
杖の上に横座りした、きれいな人が問いかける…。

「ふぇ、あわ……わ」

「大丈夫?モモ」
あわてて駆けつけるステラちゃんは、スグに私をささえてくれる。

「ステラちゃん、ありがとう…」

私は続けて、きれいな人にお礼を言おうとした。
「あの…。 ありが……」

「これからは、変な人についていってはダメよ。遅刻しないうちに早くいったほうがいいわ」

遅刻という言葉に、あわててステラちゃんが時計をみる。

「モモ。行くよっ。新学期から遅刻しちゃう」

「ふぇ。あわわわぁ~」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「で、あるから、このような校則にしたがいザマス」

担任の先生が教室の中で校則について話している。

「ステラちゃん…。遅刻しなくてよかったね。 ひそひそ…」

「モモと同じクラスでよかった…。 ひそひそ…」

隣同士になったステラちゃん。すごくうれしい。

「モモっ。モモってば、おい。先生に、にらまれてるって」
ホタルちゃんの注意でハッとする。

気づいたステラちゃんが、とっさに手をあげて質問する。

「先生。さきほどの魔法規則に関する校則の、みだらに魔法を使った者に対しては、魔法でそれを制してもいいとは、後者は規則違反にあたらないということですか?」

メガネをかけ直した先生は、すぅ~っと息を吸い込んで満足げに言う。
「よく、聞いていたザマスネ。ステラさん。その通りザマス。目には目をザマス」

ふぅー。ステラちゃんのおかげで初日からにらまれるというのは回避されたみたい。

「さぁ、朝会ザマス。大聖堂に移動するザマスよ」

天井が高い大聖堂。ステンドグラスから差し込む光がマリア様の像を神秘的にみせる。
その前に立った魔法学園の生徒会長様……。

「きれいな人…」
思わず声にだしてしまう。今日の朝、助けてくれた人。

美しく気品のある人…。きっともう、あの人に近づけることなんてないんだろうな…。
あの時、お礼をしっかりと言いたかったな…。

「なんだよ、モモ…。ぽぉーっとしちゃって。ちゃんと話聞いてるのか」
………。
「まぁ、ぽぉーっとしてるのはモモだけじゃないけどな」

「ホタルちゃん、うるさいよ。だまってて」

私は、魔法の杖からホタルストーンをはずし、首にかけた。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「ステラちゃん、今日の朝の助けてくれた人。生徒会長様だったんだね」

「うん、すごく綺麗な人だった…。
生徒会長様はまだ、妹がいないみたい…。今年、卒業だから1年生から選ぶんだって、
となりの子がいってた…」

「ふぇ、そうなんだ。妹に選ばれる子がうらやましいな」
「今日の朝、モモ助けられたし、一歩リードなんじゃない?」

私は少しだけ照れてしまう。

「次の課題。今日の朝、ザマス先生が言っていた試練。あれできっと優秀な成績をおさめられれば、お姉さまの妹になれるかも…。清楚で優秀な生徒会長様の妹だから、優秀な1年生が妹に選ばれるはず。決めるのは先生だし」

生徒会長様は、この2年間、自ら妹を選ぶことなく過ごしてきたみたい。しかし、卒業の年である今年度は、妹をつけなければならなくり、生徒会長様はしかたなく、先生の判断にゆだねたそう。

生徒会長様の妹を選ぶのは先生で、先生は優秀な1年生を妹に選ぶだろうと、うわさがすでに広まっている。

「わたし、絶対、最初の課題をトップでやり遂げてみせるよ。選ばれて、朝のお礼も絶対言うの」
私は、スゴイやるきがでていたみたいだった。

首にかけていたホタルストーンをカチッと杖にセットして唱える。

「―――――――――」

自らリスクを背負い、神に祈りをささげる魔法。絶対にトップをとるという誓いでもある。

「そのお願い届くといいね」
ステラちゃんは私にそっと見守るように言った。

光りだした杖のホタルちゃんが言う。
「モモは強い祈りをささげすぎなんだよっ。これじゃーリスクがおおきすぎる。ステラ、モモを援護してあげて」

どうやら私は張り切りすぎてしまったらしい。

「心配しないでホタル君。モモは必ず私が援護するから」

ステラちゃん、ありがとう。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「さぁ、始めるザマス。ペアで与えられた課題のタウンに行って、悪魔を退治するザマス」
先生が三角メガネを外すと同時に、みんながいっせいに教室から飛び出す。

「モモ。どうやら、私たちの課題は、トレットルタウンのどこかにいる初級クラスの悪魔を退治することみたい」

「トレットルタウンか、近くてよかったな」
ふらふわと浮かんでいる杖のホタルちゃんが言う。

「ステラちゃん、ホタルちゃん、行こう。早く町の人を助けなくちゃっ」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

~From ホタル(杖) viewpoint~

「いらっしゃいませーっ☆」
小さな少女はカウンタから身を乗り出して挨拶をする。

「こんにちは、いつまでになるかはわからないけれど、宿をとりたいんだ。お願いできるかな」
ステラは、にこやかに少女に問いかける。

「私、サラセスっていうの。お姉ちゃん達、泊まりたいの? いいよ。203号室に泊まってって」

「サラセスちゃん、ありがとう。私、モモ。こっちはステラちゃん。この杖はホタルちゃん」
モモは一生懸命に挨拶をしている。

「やーっなんだい。お客さんかい?」
奥の調理場らしき部屋から、おじいさんが出てくる。

「おじーちゃんお客さんだよっ。203号室にご案内してくるねっ」

階段をあがって203号室にはいる。モモとサラセス。
「おじーちゃんは、料理がとってもっじょーずだから。時間になったら食堂におりてきてね」

バタンッ

サラセスはドアをしめて部屋からでていった。

「モモ、今日はもう宿で休もうか?」

「うぅうん。街の人達に、変わったことはないのか聞きにいきたい。早く悪魔を退治しなきゃ」

モモとステラは街の噴水広場まで行く。

ベンチに腰をかけたおじいさんに話を聞くことにした。

「すみませーんっ、うわっ」
ずてーっと転んだモモ。

「大丈夫かい、お嬢さん。あわてんぼうなところはサラちゃんみたいだねぇ」

「サラちゃん? もしかして、サラセスさんのこと?」

「そうだよ。元気な子だろ? 最近になって元気になったんだ。昔は病気でずっと部屋で寝ていてね。おじいちゃんを手伝いたいって泣いていたもんじゃ」

「サラセスちゃんよかったね」
モモは目をこすりながらいう。どうやら少し、うれし泣きをしているようだ。

「すみません、ここ最近で特に変わった事はといったら、それくらいですか?」

「あぁそうじゃのう。まぁわしの友人、つまりサラセスのおじいちゃんが少し弱ったくらいかのう。もう、年かの」

「あぁ、料理が上手なおじいさんだろ。元気だったよなぁモモ?」

「うん。元気そうにみえたけど…」
モモは少し心配しているようだった。

「そらがな、ムリしてるんじゃよ。ここ最近のことじゃけ、ちょーどサラちゃんが元気になりよったと思ったら、友人のほうが弱くなってきたんじゃ。ムリしてるがのぉ。もう、ベットに寝たきりになるんじゃないかのぅ」

「それ、それはいつから?」
あわててステラが質問する。

「実は10日前、ほんとつい最近なんじゃ」

「10日前…、悪魔の反応がトレットルタウン付近にでた日………」
ステラは課題の紙をじっとみつめ、うつむいている。

「ま、まさかっ……。そんなのいやっ」

モモはスグにさとったらしい、悪魔との取引があったのではないかと……。

おじいさんは、サラセスのために、悪魔との寿命の取引をした。
サラセスは病気から回復し、おじいさんの寿命はすいとられ、衰えていく。

「モモっ、いくよ!」

モモの手をひっぱり、かけだすステラ。

ガチャン

「あっ、おかえりなさいっ☆ おじいちゃんの作った、おいしい食事がまってるよぉ」

「サラセスちゃん、おじいちゃんが料理作っているところみたいな」
モモはサラセスに気づかれないように言う。

「うん、そこの調理場にいるよぅ。すっごい、包丁さばきなんだから」

サラセスは料理室の前まで案内し、扉をあける。

「おじいちゃん!!!どうしたの!!!」

サラセスは、うずくまっているおじいちゃんのもとに駆け寄る。

「おぉ~サラセスか……。大丈夫じゃよ、ちょっとめまいがしただけなんじゃ」

杖のオレはモモにいう。
「モモっ! 魔法だっ」

「ミ ステルス サースル」

魔法を唱えたモモの直径10m以内にいる悪魔は姿がみえるようになる。
「やっぱりっ!!」

悪魔がみえるのは、魔法使いのみ、さらに魔法でロックをかけることができた悪魔だけだ。

「おじいさんっ! いま助けてあげるから」
ステラがあわてて、おじいさんにかけよる。

パシッ!!!

「余計なお世話じゃっ! 頼む、これでいいんじゃ… これでいいんじゃ…。やめておくれ」

「モモっ!」
振り返るステラ…。もはや、おじいさんはこれ以上もちそうにない。

「ステラちゃん…。悪魔を倒しちゃったらどうなっちゃうの……」

オレはすばやく割ってはいる。
「モモ考えるなっ! はやく魔法をっ!」

「いっ、いや… いやだよっ… サラセスちゃんが… おじいさんが…」
モモは混乱しているようだった。

「おじいさんが、このままだと死んじゃう!」

「いいんじゃ、いいんじゃ…。孫が元気ならそれでいいんじゃ、頼む、わしの幸せを… 幸せのままで死なせてくれ……」

「悪魔つきで死ねば地獄! 迷うなモモ」

モモはわかっている。明らかに悪魔を退治したところでおじいさんの命は助からないことを………。

ぎゅっと力がいれられていることはわかる。モモは迷っている。

「モモっ!聞いて、魔法は心が生み出す心の力、とりみだしちゃダメなんだ。つねに冷静で心おしとやかに。そう、モモのあこがれる生徒会長様のように」

悪魔退治の魔法を唱えられず、すくんでいるモモ。こんな状態じゃ、魔法を唱えたとしても成功しない…。

ずっと、そばにいるサラセス…。さすがに状況が伝わっている…。

「おじいちゃんを助けてっ! おねがいっ! わたしなら平気っ!」

「モモっ!」

「できないよっ! やっぱり、できないっ!」

ステラの無口な杖、スピネルストーンが声を上げる。
「お譲っ!」

それほどまでにピンチな状況。

ステラはスピネルをかざし、唱え始める…。

「カザスピネ・カザール」

まぶしく光りだしたステラの杖。

おじいさんが光につつまれ泡のように悪魔が消え去る。

「うぅぅっ…… サラセス…… サラセス…。こっちにきておくれ」

「おじいちゃ………」

バタンッ!!

駆け寄ろうとした、サラセスは病から倒れてしまう………。

「サラ……セス……」

とん…。

おじいさんの伸ばした腕が床におちる…。

沈み込むように膝をつき、倒れるモモ……。

「モモ… しかたないよ…。おじいさんは地獄にいかなくてすんだ。きっとサラセスもよろこんでる」

しばらく無言の状態がつづいた………。

「サラセスちゃんは…これからどうなるのかなぁ……」
泣きそうな、いや、泣いているモモ。

「おそらく、病で寝たきりになるだろう…。どのみち、この運命は変えられない… おじいさんが悪魔に取り付かれたまま死のうとも……」

サラセスを寝室まで運び、大広間にいく。テーブルの上には冷めてしまった料理が並べられていた…。

帰りは誰も何もしゃべらず、魔法学園へと帰還した…。

モモはショックからか、登校日まで一歩も部屋からでることはなかった…。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「みなさん、よくやったザマス! どのチームもみごと課題をクリアしたザマス」

ザマス先生から、1年生の課題には実は指導士たちが影で見守っていたことが伝えられた。それと同時に、採点もされていたと知らされる。

「トップは、セイラさんザマス」

クラスで一番、品のあるセイラさん。成績もまた優秀である。

これは、生徒会長の妹は、あの子で決定だな……。モモ……。

生徒会長の妹が決まった瞬間、モモにどんなリスクがおそいかかるのか想像もつかない…。あれだけの強い祈り…。魔法がつかえなくなる程度ですめばいいけれど……。

当日、体育館にて生徒会長の妹の発表が行われる。体育館の移動前にセイラが先生によばれていったのがわかった。

体育館に移動したモモとステラとオレ。セイラの名前が呼ばれ、壇上へと上がっていく。そこには生徒会長もいた。

セイラが正式に生徒会長様の妹に選ばれようとするところだった。

一歩前に踏み出した生徒会長は、全員の前で失礼と胸に手をあてて軽くお辞儀をする。
そして、先生に向きなおして口を開いた。

「お待ちになってください。私、決めましたわ。
先日、魔法指導士として、1年生の課題をみていました。そこで決めたのです」

目をゆっくりとみひらき、全員の方に向き直る。

「私の妹は、モモさんにします。さぁ、モモさん、この壇上におあがりになって」

おろおろしながら、のぼっていくモモ。

セイラは表情をくずさない…。きっとセイラだって生徒会長様の妹になりたかったはずだ。
「おめでとうございます。モモさん。私からも祝福します」

体育館の中、パチパチとまばらに拍手が起こり、盛大な拍手へと変わる。

ふっと髪をかきあげる、生徒会長様。舞台の袖へと歩き進む。

「さぁ、いきましょう。モモ」

照れて赤くなった顔を、コクリと下にむけて返事をする。

「はい」

胸の前で杖のオレを抱きしめたモモは、お姉さまの元へ走っていく……。

スピネルを抱きしめながらつぶやく、ステラ。
「お願いが叶ってよかったね」

1話完

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